雪バカめぇ〜!

1安達太良山

 ゴールデンウィークの都内某所。私はスノーボードで知り合った仲間たちと酒を飲んでいた。メンバーの一人はスノーボードの人気ブロガー、雪バカだ。

 泥酔した雪バカに安達太良山へ誘われ、悪くないと思った。私は百名山を登っており、安達太良山もその一つだったからだ。

 しかし、後日私を誘ったことを忘れていそうな雪バカに、今度はこちらから登山の話を持ちかけたのは、百名山以外にも意図があったからだった。

 山で雪バカを始末する。

 彼がスノーボードの人気ブロガーであることに嫉妬した私は、山で奴を亡き者にすることを思いついた。私もブログを描いているが、雪バカよりも以前から、多くの記事を書いているにもかかわらず、彼のブログはあっという間に私のブログを越えてしまいそうな勢いだった。

 奴がこれ以上人気ブロガーになる前に始末する。そう決めた私は雪バカに連絡を入れた。日程を決めたのは雪バカだ。その日が自分の命日になるとも知らずに。

 2016.6.5の朝、私は3:00に都内某所に雪バカを迎えに行った。私の自宅からはそれほど遠くない。安達太良山の登山口までは4:30程度かかる見込みだ。

 安達太良山の登山は、あだたら高原スキー場が起点となる。カーナビをあだたら高原スキー場にセットし、三軒茶屋から高速道路に乗った。

あだたら高原スキー場

2安達太良山

 途中雪バカと運転を交代しながら東北道を北上。福島県にある安達太良山は、首都圏からの日帰り登山としては遠くにあるといえる。登山自体は比較的楽なのが救いだ。

3安達太良山

 6:00安達太良SAで朝食。せっかくなのであだたらラーメン640円を食べてみた。特に期待していなかったので失望もなかったが、山の上でカップラーメンを食べるつもりだったことを思い出し舌打ちをした。朝も昼もラーメンとは。普段はダイエットで食事制限しているというのに。

4安達太良山

 安達太良SAを出てすぐの二本松インターで高速道路を下りた。あだたら高原スキー場までは下道で20分程度だ。途中のコンビニで水や食料を調達した。ランチはトムヤンクンヌードルの予定だったが、せめてちゃんぽんにしておいた。

安達太良山地形図

5安達太良山

[7:00地図A]あだたら高原スキー場の駐車場に到着。予想以上に早く着いた。この日のルートはロープウェイを使って山頂駅まで移動し、その後は徒歩で山頂までの登り。下りは同じルートを戻れば楽だが、雪バカの希望で周回コースを歩いて下山することとなっていた。

 ロープウェイの運行は8:30から。時間があるので仮眠をとることにしたが、うまく寝付けなかった。隣で眠る雪バカをいかにして始末するか。上手く事が運ぶのだろうか。不安がなかったと言えば嘘になる。

 8:00前に待ちきれなくなり、準備を始めた。日差しは強いが風は冷たい。服装に悩むところだが、半袖短パンで登ることにした。風が強くなったらソフトシェルジャケットを羽織ればいいだろう。短パンの下にはタイツを履き、久しぶりにゲーターも身につけてみた。結果的にはこの装備で十分であった。雪バカに痩せたと言われたが、奴が何を考えているかはお見通しだ。

 装備については、雪バカから事前に何を持って行くかお互いの装備を確認しようという申し出があった。特に断る理由もないので、いささか面倒ではあったが、私は自分の装備を奴に伝えていた。こちらも奴の装備リストを見る。当然だが日帰り登山の装備にそれほどの違いなどなかった。ある一つを除いては。

6安達太良山

 我々は装備を整え、駐車場を後にした。登山口で雪バカに写真を撮ってもらう。ククク…雪バカよ、下ってきた時も私は1人だぞ。

7安達太良山

 周回コースを登るというルートもあるが、我々はロープウェイを利用。料金は片道1,000円だった。

8安達太良山

 ロープウェイで10分ほど登ると山頂駅に着く。ゲレンデの規模は小さいようだ。

9安達太良山

[8:40地図B]山頂駅からいよいよ登山開始。雪バカめ、はしゃいでおるわ。ここが自分の墓場になるとも知らずにな。

10安達太良山

 登山道は整備されていて歩きやすかった。私はいつも通りダブルストックだったが、雪バカはストック1本だけだった。奴のストックは先にリングが無く、大きな針のように見えた。

 雪バカが先頭を歩く。ククク…雪バカめ、貴様の魂胆は見抜いておるわ。先日ブログの記事でもオフシーズンはろくに運動していないなどと書いておったが、その手には乗らん。テスト前に全然勉強してないと言いつつ勉強しまくって高得点を取る奴のように、全然運動してないけど余裕で登れたとか言うつもりだろう。

「簡単に登れちゃった〜全然運動してないけど簡単に登れちゃった〜。」

 雪バカめぇ〜!地獄のミサワか!実際はかなりトレーニングをして身体を絞ってきているに違いない。私がダイエットして痩せていることに気がついたのもそのせいだろう。私より速く登ってデカイ顔をするつもりだったのだろうがそうは問屋がおろさんぞ。こちらは対策も考えてあるのだ。

 我々はこまめに水分補給をしたり地図を見て現在位置を確認しながら登ったので、立ち止まることも多かった。私は気を見て雪バカの前に出た。ダブルストックの方が機動力は上だ。ククク…私が前を歩いてペースをコントロールしてしまえばせっかく鍛えた健脚を生かす機会もなかろう。スピード勝負をするはずのところをまんまとスローペースにもちこんでやったわ。

 雪バカの作戦を防いだ後、私は奴を始末する作戦を考えながら歩いていた。方法は二つ。遭難か滑落か。さてどうしたものか。

11安達太良山

 雪バカを観察していると、奴は手に何かの機械を持っていた。GPSだ!しまった、奴の装備リストに書いてあるのを見逃していた。なんということだ。

 そもそも奴が安達太良山に来た理由は、今度の冬にバックカントリーで滑るための下見だった。GPSにルートの登録をしておいて、冬にそれを生かすつもりらしい。地図とコンパスのほかにGPSまで持っているのでは、雪バカを遭難させるのは困難だ。このGPSは高度を測ることもでき、地形図と合わせて現在位置を確認するのに大いに役立っていた。用意周到な奴よ。

12安達太良山

 残された手段は滑落。私はちょうどいい地形を探しながら登った。開けたところに出たので振り返る。冬はどのような景色になるのだろうか。

13安達太良山

 山頂の案内。ここまでくればあと少し。風が強くなったのでジャケットを着た。

14安達太良山

 あれが山頂の乳首。この山は、つまりおっぱいの様な形をしているというわけだ。

15安達太良山

 最後に乳首を登る際にはクサリ場もあるが、クサリを使わなくて問題ない程度。しかしこの辺りの地形、悪くないぞ。高さもあり、落ちればイチコロだ。

16安達太良山

 10:00山頂到着。

17安達太良山

 写真撮影の後、私は雪バカに前を歩かせた。先ほどのクサリ場のあたりで景色を眺める雪バカ。ククク…その油断が命取りよ。私はストックを2本束ね、振りかぶった。くらえっ!その時雪バカが振り返った。

 雪バカめぇ〜!クソッ、失敗だ。奴には虫が飛んでいたと話しておいたが、怪しまれただろうか。

18安達太良山

 乳首から降りたところで少し休憩。乳首の下は足元が滑りやすいので注意が必要だ。

19安達太良山

[10:20地図C]我々は周回コースからの下山をはじめた。ルートを少し戻り、北側の道に入る。前を歩くのは私だ。

 背後から雪バカが声をかけてくる。若い頃部活をなにかやっていたのかと。私は少しだけ剣道をしていたので、その事を伝えると驚いた様子だった。

20安達太良山

 一度沢へ降りてから峰の辻に少し登り返す。東に見えるのは篭山だ。周回コースではおそらく雪バカを葬るチャンスは無いだろう。先ほどの失敗で、私は計画を延期せざるを得なくなった。

21安達太良山

[10:45地図D]峰の辻到着。ここまで下りると風が無くなったので、我々はジャケットを脱いで軽装に戻った。

22安達太良山

 ここからルートは二手に分かれる。右は下山の近道だが、我々は左のくろがね小屋を経由し、そこで昼食にする予定だった。

23安達太良山

 くろがね小屋手前まで下りると、岩壁が大きく崩れた様子が見えた。近くで休憩していた女性の話によると、東日本大震災で崩れたもので、福島市内からも見えるのだという。

24安達太良山

 11:20くろがね小屋到着。昼食にしたかったが、あいにく適当なスペースがなかった。これなら先ほどの女性が休憩していた辺りの方が開けていて都合がよかったろう。

25安達太良山

 止むを得ず我々は先に進むことにした。

26安達太良山

[地図E]途中の分かれ道。うっかり左に進みそうになったが、正解は右だった。地図は小まめに確認した方がいい。

27安達太良山

 11:35少し進むと多少開けた場所があったので、ようやく昼食にありつけることになった。湯を沸かしてカップラーメンを作る。山で食べるカップラーメンはなぜこれほど美味いのだろう。ちゃんぽんだが。

28安達太良山

 食後は雪バカがインスタントコーヒを作ってくれた。普段は入れない砂糖とミルクを入れる。美味いものだ。私はリラックスした気分になり、今回は雪バカを生かしておいてもいいかと思うようになっていた。冬になったら、安達太良山にはまた雪バカと来ることになるだろう。今度はバックカントリーだ。始末するチャンスはいくらでもあるはず。

 12:20出発。整備された登山道を下る。

29安達太良山

[地図F]しばらく進むと分かれ道に出た。直進すると旧道で、最短距離で下山できる。左は馬車道で、整備された平たんな道ではあるが距離は長くなる。雪バカは旧道を選んだ。

30安達太良山

 どちらの道を選んでも、途中で何度か合流はできた。雪バカは旧道を歩きたがっているようだった。早く風呂にでも入りたいのだろうか。

31安達太良山

[地図G]橋を渡るとゲレンデも近い。

32安達太良山

 リフトが見えてきた。ここはコースの脇らしい。後はコース脇を下っていけば登山道の入口にたどり着けるだろう。

33安達太良山

[地図H]雪バカが登山道を外れ、ゲレンデに出てみようと言い出した。脇道に入ると地蔵が立っていて、その先はあだたら高原スキー場のコース内だった。

34安達太良山

 コース内には我々だけで、そのまま歩くことにした。

35安達太良山

 降りてくると、コース内はロープで囲われていた。どうやら入ってはいけなかった様子。悪気はなかったのだ。少なくとも私には。

36安達太良山

 13:40登山口まで戻ってきた。二人とも無事に。目の前に温泉もあったが、雪バカは少し下って岳温泉に入りたがった。奴は温泉の記事を書いているブロガーだ。異論はない。

37安達太良山

 出発前に土産のピンバッジを買う。これで百名山も14座目だが、まだまだ先は長いな。

38安達太良山

 安達太良山を後にした我々は、さほど離れていない光雲閣というホテルの温泉に入ることにした。日帰り入浴は750円。登山の汗を流し、さっぱり出来た。バックカントリーの後もここに入ろうか。

光雲閣

 身体を動かしたからだろう、我々は早くも腹が空いていた。二本松インターから高速道路に乗る前に腹ごしらえしておきたかった。ハンドルを握る私の隣で、雪バカが店を調べている。

「ラーメンなんてどうです?福島県で1番美味いらしいラーメン屋がインターの近くにあるのですが」

 雪バカめぇ〜!ラーメンだと!朝昼とラーメンを食べた私に、さらにラーメンを食えとはどういうつもりだ。塩分の取りすぎで寿命が縮まるわ。殺す気か。

 その時、私は不意にあることに気がついた。そんな、まさか。もしや雪バカも私を始末しようとしていたのでは。

 しかしそう考えると腑に落ちることは多かった。奴が私の装備を確認したがったのは、GPSの有無を調べていたのだ。奴も私を遭難させることを考えていたのだろう。大きな針の様なストックは、私を刺すための武器だった。思えば奴が先頭を歩いてペースを乱したのは、私に前を歩かせて背後から隙を窺うための作戦だったのだ。私はまんまと乗せられたというわけか。周回コースの旧道を選んだのも、暗がりで私を襲う気だったに違いない。最後のゲレンデもそうだ。登山道を外れ、誰も来ないゲレンデに誘い込まれたことに私は気づいていなかった。それでも奴が襲いかかって来なかったのは、私が剣道経験者だったからだろう。私が失敗したように仕留め損なった場合、正面から得物で争うのは分が悪いと判断したのか。冷静で用意周到な恐るべき奴よ…。

40安達太良山

 ちなみにラーメンは私が注文した醤油も美味かったが、奴が注文した塩の方がさらに美味かった。ぐぬぬ、雪バカめぇ〜!

若武者

 こうして我々二人は死の安達太良山から生還を果たした。東京から距離はあるが、登山自体は特に危険もなく、今年最初の足慣らしには手頃な山であったといえる。雪バカとは16/17シーズンに再びこの山を訪れることになるだろうか。その時こそ奴とのケリをつけることになるだろう。それまでに私もGPS買おうかしら。

雪バカ日誌:安達太良山に登山をしてきました!

オフトレ 登山編 日本百名山 まとめ

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